この世界の片隅でーフルートベール駅でー

こんなことが世界で起こっているのか・・・日頃、満員電車に揺られ通勤しているだけで不平不満を垂らす平和ボケした私たちに、大きな衝撃を与えてしまうのが今作「フルートベール駅」だ。

今作は冒頭衝撃的な映像で始まる。無抵抗な黒人が白人警官に取り押さえられ、野次馬が騒がしく非難轟々の中、射殺される姿。これは実話を基にしているもので、私たち観客はこの無情な結末を把握した上で、物語に進んでいくのだ。そして、私たちは疑問に思う。一体何をしたら、殺されなければならなかったのか、一体全体どんな悪巧みを働いたのか。しかし、この疑問を持つこと自体間違っていたことにすぐに私たちは気づくのだ。彼は魚の焼き方を知らないお客さんに選び方から教えてあげる優しき一人の青年であり、愛する娘と一緒に家までかけっこして一喜一憂する一人のグレートファザーなのだ。彼は私らと何の変わりもないということを90分間一つ一つ説明していくように証明していく。

 

監督はライアンクーグラー。1986年カリフォルニア生まれ、「グリード」「ブラックパンサー」など商業的・批評的にも大きな支持を得ている新人気鋭の映画監督だ。

黒人問題に赤裸々な手法でありのままを伝えてくる。

今作まさに夢かと思わざるをえないことをまざまざと見せつけられる。スクリーンから憎々しく訴えかけてくる。

オスカーグラントは羽交い締めにされた時、何を思っていたのだろうか。

それは特別な感情ではなく、私たちと同じように疑問・憎しみを感じていたことだろう。私たちはこの悲しみを風化させることなく語り継がないといけないだろう。